弊社では酸化物高温超伝導体の多層構造(2層)を作製可能な酸化物積層技術を駆使して他ではマネ のできない構造を有する高温超電導SQUID素子を 作製しています[1,2]。高温超 電導SQUIDで一般的な単層構造のプロセスでは乗り越え配線が使えないため単純で非効率的な素子構造しか作製できませんが、多層構造で は乗り越え配線が使えるため複雑で効率的な素子構造を作製できます。また、ジョセフソン接合には、下部超伝導体を斜めに加工した斜面に、上部 超伝導体がオーバーハングするように積層させて形成したランプエッジ型ジョセフソン接合を使用しています。オーバーハング部分がジョセフソン 接合部分を磁気シールドする効果により、安定して屋外で動作可能な外部磁場の擾乱に耐性のある素子を実現 しています[3]。
参考:
[1]S. Adachi, A. Tsukamoto, T. Hato, J. Kawano, and K. Tanabe, IEICE Trans. Electron., Vol. E95-C, No.3, pp.337-345 (2012).
[2]田辺圭一, 電子情報通信学会誌Vol.97, pp.222-226(2014).
[3] Y. Hatsukade, et. al., ., “Characteristics of an HTS-SQUID gradiometer with ramp-edge Josephson junctions and its application on robot-based 3D-mobile compact SQUID NDE system”,Physica C 471 (2011) 1228.
上の図は素子構造の一例を示しています。酸化マグネシウム(MgO)の単結晶基板上に合 計で 7層の酸化物薄膜をエピタキシャル成長させています。左上は原子像レベルで撮影したジョセフソン接合界面のの透過電子顕微鏡写真です。横 縞の周期が超伝導体の結晶構造の周期(1.2nm)に対応しており、2つの超電導層の界面に約1nm(1/1,000,000mm) の均 一なバリア層が形成されていることがわかります。右は作製した素子の光学顕微鏡写真です。外形200μm×200μmのエリアに作製した 渦巻きコイ ルを介してSQUIDに信号を高効率で伝達します。
SQUID素子はすべて弊社のクリーンルームで作製されています。写真は6層目までの酸 化物 層の作製に用いられているオフアクシス型スパッタリング装置です。7層目の上部超電導層はレーザー蒸着法で作製しています。マスクレス露 光装置やイオンミリング装置を用いて半導体プロセスと同様の微細加工を行っています。